養分の少なく、荒廃した土地でも生育することができ、山間部の土壌流出や、沿岸部の防風、防砂に大きな役割を果たしているマツ、山間部や沿岸地域の農地を間接的に守ってくれる大切な存在です。またその実(松の実)は食べることができる果物です。
松の実
日本でよく見るアカマツやクロマツの実は小さく、あまり食用にはなりませんが、チョウセンゴヨウという種が中部地方などで自生しており、こちらは食用に向いています。
そのままナッツとして食べるほか、ジェノベーゼなんかが有名ですね。松の実の鼻の奥に抜ける独特な、さわやかな香りが魅力です。

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そんな植えてよし、食べてよしの松ですが、この松を大規模に駆らせてしまう病気が“松くい虫”です。あなたのうちの近所の松が枯れだしたら、もしかしたら松くい虫が原因かもしれません。ほおっておくと、あっという間に回りの松にも広がり、やがて全ての松が枯れてしまう恐ろしいものです。木の無くなってしまった山は、土壌流出や、土砂崩れなどを起こしやすくなり、自然が荒廃してしまう原因となります。松くい虫にかかると、松の木は急激に衰弱し、数か月のうちに枯れてしまいます。
日本における激しい松枯れの記録は、1905年(明治38年)の福岡、長崎だそうで、それ以前の記録はないそうです。当時、なぜ松が大量に衰弱し枯れていく原因をつかめておらず、初期にはカブトムシ、キクイムシなどの昆虫が松を食べることで枯れているのではないかとされましたが、これらの虫が直接に松を枯らす原因にはならないそうです。第二次大戦後に松くい虫の被害が多発した際に、報道によって「松食い虫」という名前が一般化したそうです。後述しますが、松くい虫というと、カミキリムシやコガネムシのような昆虫をイメージしますが、実際の松くい虫は昆虫ではありません。

長らく直接的な原因が不明であった松枯れですが、1969年に森林総合研究所(当時は林業試験場九州支場)の徳山陽山さん、清原智也さんが枯れてしまった末から線虫を見つけ、この線虫を健康な松の木に移したところ、その松も同じように枯れることを発見し、人工的に松枯れを起こさせることに成功しました。これを気に研究が大きく進展し、現代では松くい虫による松枯れは、この線虫(マツノザイセンチュウ)が直接的な原因となることが分かっていますが、どのようなプロセスで松を枯らすのかというプロセスについては、明らかになっていないことも多いそうです。
このマツノザイセンチュウがどのように松から松へ移動し枯らせていくのかという経緯も興味深いです。始まりは、マツノマダラカミキリというカミキリムシと、マツノザイセンチュウと、これが原因で弱ったり、枯れてしまったりした松からはじまります。マツノマダラカミキリは交尾ののち、弱ったり、枯れてしまったりした松の樹皮下に好んで産卵します。マツノマダラカミキリは松の柔らかい部分を食べて成長し、やがて蛹になります。蛹になると、その周りにマツノザイセンチュウが集まってきます。
やがて蛹が孵化すると、マツノザイセンチュウはカミキリの体に取り付きます(その数なんと数万頭!)カミキリはやがて樹皮に穴を開け飛び立っていきます。
巣立ったカミキリは、元気な松の若木を食べますが、そこでカミキリの体から、松の木へ移り、カミキリの食べた傷口から松の内部へ侵入します。侵入された松は数か月で変色し、枯れてしまします。そしてこの松に先ほどのマツノマダラカミキリが産卵し(以下ループ)
このようなプロセスを繰り返した結果、大きな面積の松が枯死してしまい、異様な光景が広がることになります。
松くい虫への対策は、木の中のカミキリの幼虫を殺す。巣立ったカミキリが健康な松を食害する前、線虫が乗り移る前に駆除する、薬剤を松に吸収・注入して予防する方法などがあります。いずれも、一度松くい虫に侵入されてしまうと、その松を回復させるのは非常に難しく、伐採して被害が広がるのを抑えるしかありません。対応が遅れると松林全体が枯れてしまいます。
松枯れした山を見たことがあるのですが、山中の松が茶色く立ち枯れていて本当に寂しい風景になってしまいます。そこが観光地出会ったばあい、イメージダウンの問題もあります。松枯れを見つけた場合は、自治体に連絡することをおすすめします。
参考サイト アクセス日 2023/03/03
Wikipedia-アカマツ
Wikipedia-松の実
Wikipedia-チョウセンゴヨウ
林野庁-松くい虫被害
国立研究開発法人 森林研究・整備事業 森林総合研究所 四国支所-松枯れの仕組み
Wikipedia-マツ材線虫病
国立研究開発法人 科学技術振興機構-松枯れの謎に挑む
Wikipedia-ペスト・アッラ・ジェノヴェーゼ


