
夜の村を、轟く雷鳴と激しい雨が包み込んでいた。
ここ青森県の山間にある小さな村、緑谷(みどりだに)は、近年の異常気象でたびたび被害を受けている。この夜もまた、村を流れる川が氾濫し、大地を飲み込もうとしていた。
村の田んぼで奮闘していたのは若き農家、拓真(たくま)。祖父から受け継いだこの田んぼを守るため、彼は豪雨の中、崩れた土手を補修しようとしていた。しかし雨の勢いは増すばかりで、ついには田んぼ全体が濁流にのまれてしまった。
「もうダメかもしれない……。」
泥まみれになりながら、拓真は呟いた。生活は苦しい。それでも田んぼを守るために、毎日汗を流してきたのだ。
翌日、雨が止み、村全体が打撃を受けたことが明らかになった。役場から派遣された職員が調査を進める中、村人たちは皆、諦めた表情を浮かべていた。拓真の田んぼも見る影もなく荒れ果てていた。
だが、拓真は動きを止めなかった。泥に埋まった苗を掘り起こし、使えるものを一つひとつ手に取っていた。その姿を見て、隣の田んぼの持ち主が声をかけた。
「そんなことして、何になるんだ?」
拓真は振り返り、力強く答えた。
「祖父が命を懸けて守った田んぼを、俺が見捨てるわけにはいかない。この土地は、俺たちを裏切らないはずだ。」
その言葉に胸を打たれた村人たちは、次第に拓真を手伝い始めた。「このままじゃ村がなくなる」と、若者たちが声をあげ、田んぼを再生する作業が始まった。
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