【短編小説】緑の夢 / 前編

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2025年の春、田園の風景が朝日を受けて輝く中、若き農業者のあやは、一人で自分の農場を営んでいた。

彼女は、高校卒業後、実家を離れ、忘れ去られた小さな農業コミュニティに戻ってきた。目的は、先代から受け継いだ農地を再生させることだった。

あやの農場には、使われなくなった温室があった。最初はひとりで作業を進めていたが、地元の住民との交流を深めるうち、彼女はコミュニティの重要性を再認識した。ある日、彼女の農場を訪れた俊(しゅん)という青年がいた。彼は農業を学ぶために都市から戻ったばかりの若者で、あやの情熱に魅了された。

「この温室、何か特別なものを育てる予定なんですか?」と俊が尋ねた。あやは微笑みながら、「まだ計画段階だけど、新しい種類の野菜を育てたいと思っているの」と答えた。俊はその言葉に興味を持ち、自ら手伝うことを申し出た。

週末ごとに、俊はあやの農場を訪れ、共に作業をするようになった。次第に二人の距離は縮まり、彼らは季節ごとの野菜の成長を見る中で、互いに惹かれ合っていった。

その頃、町を盛り上げようという動きがあり、地域の若者たちが集まり、農産物の直販イベントを企画していた。あやと俊はそのイベントの準備に取り組むことになった。自分たちの育てた野菜を皆に食べてもらい、コミュニティを再活性化させるためだ。

「私たちの努力が実ったとき、どんな気持ちになるかな?」とあやがつぶやくと、俊は優しい眼差しで彼女を見つめ、「きっと、自分たちの居場所が見つかったって感じがするだろうね」と答えた。

イベントの日が近づく中、二人はお互いの気持ちをただ「友達」として包装していた。しかし、互いに流れる視線や、無邪気な笑い声は、すでにそれ以上の関係を示唆していた。

その日、農場は幸せな笑顔と鮮やかな野菜で包まれた。町の人々が訪れ、温室の中で行われる試食会は大盛況。あやと俊は、その光景を眺めながらどこか特別な瞬間が訪れることを期待していた。

「あや、素敵な時間を過ごせているね」と俊が言うと、あやも満面の笑みで頷いた。「うん、私たちの夢が形になっているような気がする。」

だが、その中で、あやは自分の感情に気づき始めていた。彼女の心の奥底で、俊への思いが芽生え始めていたのだ。

そして、イベントのクライマックス、日が沈む頃、あやは俊を温室の中に呼んだ。彼女の心拍が早くなるのを感じながら、言葉を探していた。


後編 ▶


[ojisama]

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