【短編小説】忘れられた風景の再生 / 前編

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山々に囲まれた小さな村、山里町。

かつては四季折々の風景と豊かな自然に恵まれたこの村も、時の流れと共にその輝きを失いつつあった。幼い頃の翔太にとって、村の風景は特別なものだった。秋には山々が赤や黄金色に染まり、果樹園では子どもたちの笑い声が響き渡った。収穫した果物を祖母の家に持ち帰ると、台所にはジャム作りの甘い香りが漂い、祖母が笑顔で迎えてくれたのを今でも覚えている。

しかし、今はその面影も薄れていた。田畑は荒れ果て、果樹園の木々は手入れされることなく伸び放題。かつて賑わいを見せた村の商店街も、シャッターを下ろしたままの店が目立つようになった。

祖母が亡くなり、久しぶりに帰郷した翔太は、変わり果てた村の姿に心を痛めた。幼い頃、祖母が語った言葉がふと蘇る。
「この村はね、ただの土地じゃないんだよ。人の心を育てる場所なんだ。」

翔太は、祖母が愛したこの村を再生させたいという思いを胸に、都会での仕事を辞め、村に残ることを決意する。けれども、その道は険しかった。村の人々に相談しても、帰ってくるのは「もう無理だ」「誰も来ないよ」という冷たい反応ばかりだった。

ある日、翔太は祖母の家の裏庭に広がる果樹園を訪れた。幼い頃に祖母と一緒に過ごしたこの場所も、今では荒れ放題だった。しかし、伸びた枝の中に、真っ赤に実った一つのリンゴを見つけた翔太は、そっとそれを手に取り、懐かしさと共に涙をこぼした。
「まだ、希望は残っている。」

翔太は果樹園を整備し、村に新しい風を吹かせようと決意する。「果物を通じて村を再生させる」。彼の中に一つのアイデアが芽生えた。


後編 ▶


[ojisama]

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